ファンダリアなのだから雪が積もっているのは当然で、適応しなくてはいけなかった。
足を引っ張るなど、許されなかった。
例え自分以外の全てが許しても。
雪の地面から氷が覗いていてそれに足を滑らせて、光るものが近くに迫っているというのに、視線が彼を捜した。
あぁ、また自分は彼に守られて、彼は危ない目にあうんだと、駆けてくる彼を見ながら
来ないでと、切に願った。
守らないでと言ったのに。
手を伸ばして彼の腕を握り締めて、驚きが隠されていない顔に、近頃全く見せなかった笑顔を向けて。
力の限りに胸に抱きこんだ。
ずるりと、支えられなくなった身体を任せそれでもイメージを浮かべる。
「レイ」
モンスターが消えたかは見えなくても意識は遠く流れていきそうだ。
「っ!!」
抱えられたままで横たえることがないのはきっと、雪が体温を奪うから。
こんなところで死なれては確かに迷惑だ。
「…ごめ……また…めいわ」
「いいから黙ってろ!」
目の前の人はもう霞んではっきり見えないがどうやら焦っているようだ。
それから布を破く音が聞えて冷たくなってきた身体に当てられる。
ここには彼しかいないはずで、こんなにも温かいのは彼の体温で。
「ごめ……なさぃ……」
回復の術を持たない彼は、きっと苦労している。
こんなもののために。
「…………許さない」
そう、許されるはずがない。
「ごめん……な…ぃ」
それでも私にはこれしか出来ない。
「…………死んだら許さない」
もう、言葉を伝えることもままならない。
一番、伝えたかったことが
「死ぬなっ!!」
一瞬だけ彼の顔が明白に映されて、奇麗な瞳から染み出してくるものが見えて。
あぁ、出会えてよかったと。
ほとんど死体になりかけの身体から腕に全てを込めてぐいと引っ張って触れて。
微かに囁いて。
『リオンー!早く行こうよ!』
黄昏時のダリルシェイドの町を踵の少し高いブーツで駆け抜ける少女。
貴方の眼に映ることに必死だった
『そんなに急がなくたって食事は逃げたりはしない』
決してその後を追わずにペースを保つ痩躯の少年。
あの頃は毎日当然のように貴方の後ろで
『そーゆー問題じゃないでしょー!?確かデザートは特製のプリンだってマリアン言ってたなー』
少女のニヤリとした笑みに後ろにいる少年は気付かないで
聞いた途端に表情は変えず、内心で歓喜の宴を始めたが平静を装って構える。
『………走るぞ』
一人になることなどないと理由のない自信があった
『うっわ、早……って待ってよ!!』
素晴らしいほどの勢いで走り出した少年に少女が追い着いたのは、少年が屋敷の前で荒いだ息を整えているころだった。
守られることを辛く感じ始めたのは何時
その路はいまだ残されているだろうか、その路は彼らを導くだろうか
気配を察した少女が警告すると、慣れたように少年は剣を振る。
『リオンっ後ろっ!!』
『はぁっ!!』
『でぇいっ!!』
止めに気合ともども入れられた蹴りは傷を開き命を絶つ。
役に立てたと自信が持てるこの瞬間に溺れた
『……ふぅ』
ひと段落した戦闘の余韻が晴れぬままに、少年は溜めていた息を吐き出すように呼吸する。
『おやおや坊ちゃんはもうお疲れでちゅかぁ〜?』
『………』
からかった少女に無言のまま剣を抜き、つかつかと歩み寄った。
今は焦がれたこんなにも近い距離
『うわぁぁっごめんごめん謝るから切らな……』
ざっと何かを切る音に振り向き奇麗に染まった少年の剣を見つめる。
浮き上がれないほどに甘いあの沼は
『背後のモンスターに気付かないようでは、僕の背中は預けられんな』
そう言われも仕方の無いことだった。
未熟すぎたこの技量は半端なだけで己に要らぬ過信を埋め込む。
『………ごめんなさい』
同時にひどく苦しくて辛くて
『……悔しいなら追いついてみろ』
『……いつか絶対、追い越してやる』
『ふん』
それでも離れないように追い続けた
交わした誓いを今は遠くへのせて、そして彼らは道を創る
『スタン〜ね、デートしに行こうか』
『っんなぁうええぇっ!!!?』
軽く体重をかけられた肩よりも、後ろ斜めからの視線は幾倍も重く。
『………』
戯れを咎められた視線は気付いたけれど
『冗談だよ、冗談』
全く気付かずにケラケラ笑いながら肩を組まされると流石に黒い影が動き出した。
『いや、殺されそうなほどの視線に射抜かれて……』
『ん〜?どうかしたのリオン』
『………』
自惚れてしまいそうに堪らなく嬉しくて
何も告げぬ口の主は組んでいた両の腕を解き、正しく光速で青年の首を絞める。
『っぐふえぇっ……くびっ首がぁぁ…し……ふぅ…』
『リオンっスタンが死にそうだけどっ!?』
『お前の所為だ』
『何がっ!?』
『………もういい』
そんなことは有り得ないのだと知りながら
ぺっと青年を投げ捨て不機嫌をそのままに去ろうとする少年を、少女は反射的に追いかけた。
『えっ!ちょ、待ちなさいよ理由ぐらい……』
『――――――(チーン)』
勘弁してくれと嘆いていた声は誰に伝わるのか。
少しでも傍にいたくて強くなった
先を行く少年の路を少女は追いかけ、誓いを果たすのは不定の刻限
不器用過ぎたのかな
意地を張り過ぎたのかもしれない
お互いの気持ちを確かめられなくて
随分振り回されたものだ
結局こうしていられたのって本当に一瞬だけだったけど
それでも幸せと言えないか
私は幸せだったよ
僕もだ
彼女の囁きが残る
言い返すことが出来なくて
そのまま逝ってしまった君へ
今はこの想いを空に
君に届くように
「 」
END
2004.8.5
修正 2005.8.23
意味不明で始まり意味不明で終わる。
誰かさんみたいだね。
名前変換計3回、ご苦労様でした。
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